個人練習

ギタリストで差がつくのはカッティング

2012年 12月 25日 03:05 | カテゴリー: 個人練習
2012年 12月 25日 03:05
個人練習

前回、ピッキングハーモニクスで、奏法(いわゆるPLAYです)について書いたところ、意外と多くの方にご覧いただいたようで、もう一つ奏法について書いておこうと思います。

僕も若かりしころは、スタジオミュージシャンなんぞ目指していたわけですが、当然どんな要求にも応えられるように、様々なスタイルを身につけようと躍起になっていたころがあります。まあ時代が良かったのか、80年代は現役でしたし、ちょうどスタジオミュージシャン同士がバンドを組んで、いわゆる「フュージョン」などのジャンルが日本でも確立されたころで、いろいろな曲をこぞってコピーしたものです。

当時で言うと、日本ではパラシュート(ギタリストなら松原正樹、今剛)、スクエア(現在のTスクエア、安藤まさひろ)、AB’s(芳野藤丸、松下誠)、プリズム(和田アキラ)などなど、もちろん、他のバンドメンバーもスタジオ系のミュージシャンだったりしますので、こうしたスーパーバンドは、他のバンドも乱立する中で、さらに抜きに出てきた一流のミュージシャンたちで構成されたバンドです。しかし意外と長続きしません(笑)。それぞれ個々の仕事が忙しいとバンドをやりきれなくなるのが原因です。

そんな中で一応僕も仕事の現場をいくつか見てきているわけですが、そのころからどうしても消化できないことがありました。フレーズは勿論ですが、センスというか、そうしたところでギタリストの差は出てくるのはわかりますが、プロギタリストがこぞって口にしてたのは「自分の音を見つけること」です。今を思えばそうしたフレーズを作り出すセンスも含まれるのでしょうけど、確かに当時はみんな出てくる音が違っていました。なので、若気の至りでそれをストレートに「音色」と捕らえました。今でこそ、僕は自分の音を持っていますし、ほぼどんな機材でも自分の音(音色として)にすることができます。

ただテクニックだけはどうしようもなく、下手なものは下手。今でも早弾きなんて苦手だし、アドリブだって間違える。そんな中で、僕の先輩やプロギタリストがもう一つ言っていたのは、「カッティング」でした。音を選ぶセンスも勿論だけど、音を安定させてシャープな切れを出せるのがなかなか難しかったわけです。しかも当時の流行は16ビートで、チャカチャカ刻んでビートを保つのが難しかったわけです。

昨今の、早いテンポの、歪みでかき鳴らし系のバッキングとは違います。ノーマル音でコードやシングルノートを組み合わせたりする16ビート系や2/4などのアクセント系タイプがカッティングです。まあ、ファンク系とでもいいましょうか、まさにその人でないと出せない音なんです。勿論タイミングはコピーできるでしょう。でも最初に曲に合わせてそのフレーズを考えて弾きこなすことは、センスならではですが、テクニック面から見ても差が大きく出るのがこのカッティングです。

 

うまいカッティングとは

ギターはへたくそなんですが、唯一僕が人からほめられるのは「音色」と「カッティング」です。音色は結構自信あります(手前味噌ですが)。カッティングは、ある特定条件付です。エフェクター頼りです(汗)。コンプが必須です。ですから、まだまだ僕の先輩やカッティングのうまいプロギタリストには追いつけません。

コンプがあればある程度聞かせられるカッティングは可能ですが、安定した切れるカッティングに至るには単にコンプを通しただけでは無理です。まだばらつくカッティングにコンプを通したのと、少々切れる安定したカッティングにコンプをかけるのとでは、出音が違うわけです。僕はかろうじて後者らしいのです。

 

うまいカッティングの10の条件

では、そのカッティングのポイントを挙げてみましょう。文章だけでは難しい部分もありますが、教則本にも書かれていないことも書いてますので、参考にしてみてください。

うまいカッティングの条件 その1 スピード

たとえば16ビートを取るのに、ギターではダウンストロークとアップストロークで刻むことが多いです。ダウンでは6弦から1弦へ向かって、アップではその逆です。普通は、素人さんはアップのほうが若干早く切れます。この「切れる」という表現は、1~6弦まで(またはその逆)の右手を振りぬく早さが早いこと、つまりより短時間で弾くことを言います。

割と速いテンポの四分音符140前後なら、誰でも切れて聞こえるのですが、ミディアムテンポクラスの110くらいだと、弦がばらばらに鳴っているように聞こえます。これはテンポの遅さで腕の振りぬきが遅くなり、各弦のアタックにばらつきが出て「チャッ」とそろって聞こえずに、「チャラララン」と聞こえます。ただアップ&ダウンの連続動作のため、普通に16ビートには聞こえるのですが、なんとなく切れがなくリズミックに聞こえにくいものになります。

各弦のアタックが揃うくらい早く腕を振りぬくと、切れて聞こえるわけです。ですから若干テンポに影響されることはありますが、弾く弦の両端の弦(全部の弦なら6弦と1弦)の時間差がないほうが切れて聞こえます。

うまいカッティングの条件 その2 手首の返し

同じストローク幅(仮にギターのボディ幅とすると)で腕を振ると、手首を固定した状態よりも手首をひねった(アップの時には手首を返して手のひらが見える方向、ダウンのときは、手首を回す感じで手の甲が見える方向)ほうが、ストロークの距離が伸びます。肘から腕を振る直線よりも肘から腕を振りながら両頂点で手首を使う曲線という感じです。

これで同じテンポを維持しなくてはならないので、振幅幅が出る手首を使ったほうが振りぬきは早くなくてはなりません。これがよく言う「手首を(やわらかく)使う」というやつです。そして、上から下へ、または下から上へ腕を振るときには、途中で手首を返さなくてはなりません。理論的に言うならばボディと手のひらが平行になるのは、弾く弦の中間地点(6~1弦のダウン時、1~6弦のアップ時には3、4弦あたり)あたりが理想です。ここを軸に手首を返します。

うまいカッティングの条件 その3 ストローク幅

その2の手首の返しと密接な関係にあるのが、このストローク幅です。大きければいいってものでもないし、かといって、小さくても余裕ができるので、切れにくくなります。適度な振り幅は、テンポによっても変わってくるのですが、これは体で覚えるしかありません。しかも個人差が出やすいので判断は難しくなります。

手首の返しで言ったように、問題は振りぬくスピードです。これがちゃんとビートを刻んで感じられるように、だらけたストローク(各弦のアタックがそろって聞こえない)にならないように演奏しなくては切れているカッティングとはいえません。

うまいカッティングの条件 その4 弦に対してのピックの深さ

僕はまだコンプを使わないとできない領域なのですが、弾く対象の弦を均一に弾くことで、アタックが揃います。ですからピックが弦に触れるときの深さは、あまり深くても遅くなるだけですし、浅いと空振りすることもしばしばあります。どちらかというとあまり深く持たずに適度な硬さを持ったピックが必要です。また、弦のゲージにも負けない硬さですね。フォークギターに使うようなThinでは、弦にピックが負けてアタックが遅れます。

切れるカッティングで、すごいギタリストに斉藤英夫さんがいます。実際にここに書いていることを森高千里さんのレコーディングのときに目の前で教えてもらったのですが、彼はべっ甲の三角ピック(あのガッチガチに硬いピック)で、.010のゲージでものすごいシャープな切れるカッティングをします。その場で英夫さんのギターを弾かせてもらったとき、ピックの硬さに負けて振りぬけませんでした。ピックがはじけ飛びましたから。これを英夫さんはいとも簡単に振りぬくわけです。出音は勿論シャープというほか在りません。確かにそのときに「おまえは振りぬくスピードが遅いんだよ」と言われました。

このときの英夫さんのカッティングを見ていたときは、硬いピックだけに割りと浅めにヒットしていました。あまり深いと、僕のようにピックがはじけ飛びます。あとは、ピックを持つ握力です。本当にしっかりに握っていないとべっ甲はきついです。僕は割りと握りが弱く、ピックも良く持ち直しをします。これが悪いのかもしれません。

うまいカッティングの条件 その5 アタック

適度に硬いピック(厚さ1mm以上)ですと、そこそこアタックは出ます。しかし、よく「カッティングではピックと弦は平行にヒットする」なんて言われますが、これは正直??です。切れるカッティングを身上とするならば、普通に斜めに当てたほうが振りぬきやすいわけです。そして、シャープに鳴ります。あたる面積の大きいおにぎり型ピックでは、そうかもしれませんが、ティアドロップ型では少々斜めだろうがかまわないのでは?と思っております。僕自身、斜めに当ててますし、意識しないと並行には持っていけません。

厳密に言えば6弦(巻き弦)と1弦(プレーン弦)では出音もアタック感も違うので、ここでは限りなく同時に鳴るくらいのアタック、弦をヒットするタイミングの問題です。いくつも言ってきたのに、共通項は時間軸なんですね。後はこのアタック感をコントロールするには、やはり手首の返しが問題になります。

本当にうまい人なら、たとえば1~4弦くらいのカッティングなら、「パ~ン」と、まるでコードが一塊の音で聞こえます。つまり、弦のばらつきが感じられず、いっぺんに音が出てくるように感じます。いいコンプだとこれが作りやすいです。でも普通の人はコンプかけても一体感のあるコードの塊に聞こえないんです。

うまいカッティングの条件 その6 安定した音量

信じられないかもしれませんが、僕の先輩はコンプなしで、アップとダウンで同じ音を出します。むちゃくちゃカッティングがうまいんです。つまりヒットする各弦の音量が揃っていて、なおかつダウン時(6弦から1弦へ向かって)とアップ時(1弦から6弦へ向かって)で、両者の差がほとんど聞こえません。これは各弦がほぼ同タイミングで鳴っているからに他なりません。

どう考えても物理的に全部の弦を爪弾く以外、同時発音はできないのに、ストロークで各弦の発音タイミングの差が聞こえないくらいシャープなんです。

驚くのはまだ早く、実はこれに抑揚が一定なんです。つまり、指示されたアクセント以外は、常に一定の音量なんです(つまりノーアクセントで演奏できるということ)。これ、DAWで録音すると通常の人は、リズムに合わせた波形の大きさ(音量)にばらつきが出るものです。ですが、先輩はこれまたコンプなしで、音量がほぼ一定なんです。最初は人間業じゃないとまで思っていました。

うまいカッティングの条件 その7 ヒットする弦

右手(ピックを持つ方)は、全部の弦を一定に弾くわけではありません。たとえば、1~4弦だけだったり、シングルノートなら4弦だけとか、3弦と4弦を交互にとか、複雑なストロークが存在します。しかも、弦の太さによっても出音(特に音量)が変わりますので、それを均等に弾くのは容易ではありません。

しかし先輩曰く、あるレベルを超えた人ならそれは安定感を伴って弾くことは可能だそうです。現に先輩がそうでしたし、その師匠もそうでした。機械のように正確に、安定感がある弾き方は、そう簡単に身に付くものではありません。私はまだまだですが、そんなハイクラスの人の音を聞いて育ったので、耳だけは肥えており、プロといえども(残念なことに)切れていない人はたくさんいますし、形だけはできていても音に反映されていない(特に中級~上級レベルの人)人が多いので、やはりカッティングは気にしますね。

うまいカッティングの条件 その8 左手(弦を押さえる方の手)

例によって、左利きの方は右手です。つまり、コードを押さえるほうの手です(以下、左手と略します)。カッティングにはデュレーション、音の長さが重要です。ですから、ずっと左手ばかりを言ってきましたが、本来は両手で50:50です。コードの押弦や不要弦のミュートは勿論ですが、スライドやテンション入れ、ブラッシングなど、左手のテクニックも様々あります。

その中でも、基本的に「押さえる」ことで音の長さを決めるギターでは、音符ごとの長さを左手で決めることになります。このとき、たとえば連続の8分音符の場合、左手を押さえっぱなしでは、まるでアコギのストロークのようにかき鳴らし系になりますが、押さえる長さを音符の半分のタイミングごとに、押さえると浮かすのを交互にすれば、8分音符のスタッカート(16分音符で切っているとも言える)ができます。

しかも左手は、右手によるストロークで弦にヒットする前に押さえながら、右手のヒット後にどのくらい伸ばすか(押さえておくか)というタイミングを自らの意志で作らなくてはならないため、右手が1~6弦のように離れていても振り抜きを早くして発音タイミングを合わせながら、左手をコントロールしなくてはならないわけです。この一連のコントロールが短時間で済むほどシャープで切れが良いカッティングになります。

さらに前述の左手専用のテクニックは、難易度をさらに上げるわけです。コードトーンのテンション入れ(ハンマリング/プリング)やスライド、シングルノート時の他の弦のミュートなどなど、これらのテクニックを入れるとタイミングがかなりシビアになりますので、うまい人と形だけの人は大きい差が出ます。

うまいカッティングの条件 その9 左右のシンクロ

前述のように弦を弾いたり、押さえたりなどを両手でやらなければならないことをごくごく短い時間でタイミング良くシンクロさせながら、時にはシンクロ、時にはバラバラに、といった弾き方を切り換えながら弾くのは並大抵じゃありません。

しかもこんなことをいちいち頭で理解しなくても、体が動かなくてはまともにカッティングも出来はしません。まあ、無意識のようにできて無くてはならないことです。これは普通のピッキングでも言えますね。

うまいカッティングの条件 その10 音色

そして、最終的なところはプロがこぞって言っていた「音色」です。これを出すために僕は様々な改造を試しまして、今では自分の音を確立しています。ストラトならば、リアハーフ、フロントハーフに足して、3シングル、レスポール系の2ハムならば、センターで両PU共にパラレルなどを使用しています。

さらにプリアンプまたは中間に入れるEQを使って、中域を太めに高域を出す、低音域は通常のロック系よりはややカット気味にして、ハリのある音を作るようにしています。その上で、ギターのセッティングで気持ち柔らかめ(3シングルの時にはリアハーフほど高域は出ません、というよりフロントが加わって太めに聞こえます)で、耳に痛くない程度にしています。

よくマルチエフェクターのプリセットで、直に卓に突っこんだような硬質な中抜けの音も流行ではありますので、たまに使ったりしていますが、自分ではあまり堅すぎてもどうか?と思います。楽曲に対して使い分けることも大切です

 

今回はいつにも増して長文でしたが、いかがだったでしょうか?

たぶんこの条件をクリアしたなら、ギタリストとしては一目置かれる存在になるでしょう。オールラウンダーやスタジオ系のギタリストなら特にカッティングは他のギタリストと決定的に差が付けられるところです。安定しているプロは多いですが、切れるプロは一握りと言っても良いでしょう。

 

おまけ

僕が切れるカッティングでよく挙げるギタリストには、芳野藤丸さん、斉藤英夫さん、ハイラムブロックなど何人かいますが、ちょっとお勧めの楽曲を聴いてみてください。

 

こちらはErnie Islayというギタリストの1stアルバムの1曲目です(なぜかハイラムブロックではありません)。のっけから切れているカッティングに圧倒されました。

 

http://youtu.be/9z-0Bag-HL4

リクエスト無効で埋め込みできませんでした。リンクで見てください。森川美穂さんのBlue Waterという曲です。アニメの「ふしぎな海のナディア」のテーマソングです。これたしか斉藤英夫さんです。アルバムにも楽曲提供しています。この安定したカッティングでシャープに切れまくっています。かっこいいです。

 

最後にもう一つ。言わずと知れたエヴェンゲリオンのテーマソングです。こちらは記憶に間違いがなければカッティングは芳野藤丸さんです。これもよく切れています。何度かライブでやりましたが、友人にこの曲でカッティングを認められたのは嬉しかったです。

 

この3曲を聴くだけで、大体切れるカッティングというモノが理解できると思います。売れ線の一流スタジオギタリストでもここまで切れている人は、そう聞きません。うまいんだけどシャープじゃないって感じです。割と音が硬質ならそれっぽく聞こえることもありますが、前述の条件を踏まえてよく聞くと、これほど切れているカッティングになかなか出会えません。へたくそでも僕が目指したいレベルです。