リペア

調整で楽器は生まれ変わる

2013年 10月 15日 03:54 | カテゴリー: リペア
2013年 10月 15日 03:54
リペア

最近よく話すギタリストのT君。彼の悩みはやはり音作りで色々と自分でも調整や改造でいじり倒すタイプらしい。話を聞くとメインで使っているのはテレキャスター。ジャパンヴィンテージと呼ばれる年代のものでフジゲン作成のFender Japan製です。

それにピックアップをLindy Fralin製のフロント/リアセットに自分で交換したものだそうで、もちろん他パーツもあわせて交換したらしい。

と、ここまで聞くと、結構ギターも作り込んでいい具合だろうと思いきや、T君の悩みはこのギター本体とのこと。じっくり話を聞くと、

  • 倍音がうるさい
  • なんか太くない
  • 思ったような音にならない

などなど、いくつか不満を持っている様子。スタジオでの練習の音を聞いても、エフェクターやアンプを含めて、たしかにそのエフェクター(定番と呼ばれるいいブティック系エフェクター使ってます)、アンプの音じゃないし、リンディのPU(T君が自分で交換済み)がこんな感じではないのです。

で、あれもこれもと解決策を話していたのですが、今度うちに遊びにくることになりました。

 

遊びにきたT君

T君がそのテレキャスを持って「見てくださ~い」ってなもんで、遊びにきました。今回はZoomG3を使ってモニタリングして、Logicを通してスペクトラムアナライザーで視覚的に確認できるようにして、まずはサウンドチェックから始めました。

first.jpg

T君は基本的にリア1発使いでクランチのバッキングで押していくタイプなのですが、そのリアが前述のような始末らしいので、スペクトラムアナライザーを通してみたところ、確かにハイ上がりで太さが出ていません。元々リンディのPUはヴィンテージタイプでもこんなにハイ上がりになることはないのです。

ここでリンディフレーリン製のPUについて簡単に説明しましょう。

僕自身は元々ダンカン党なんですが、2番目位に好きと言えるのがリンディフレーリン製PUです。とても素直でレンジの広さを持ったPUではあるのですが、調整が結構シビアな分決まるとそのギターの持つ音を100%引き出すと言っても過言ではなく、玄人好みのPUである、というのが僕の印象です。

なので、硬さを持ちながらも武骨な太さという、本来のテレが持つ音にはちょっと遠い感じだったのです。

 

調整開始

まずは、ざっとギターを目視します。ネックの反りやねじれは無し。フレットがちょっと低いのが気になるけれども、ピッチ感は良い。ねじ類の緩みも見られず。本体は良いですね。では音聞いてみましょう。

ん~、やっぱりバランスが悪い。各弦を1本ずつ弾いてみると出力があっていません。これは単純にスタッガードであるPUのポールピースが、弦にうまく向いていないようです。テレキャスターのリアPUは角度も変えられる3点止めですので、一見して弦に向いているようでも、要はポールピースから出ている磁界にうまく弦振動が乗っていない、逆に言うと弦振動をうまく捉えていないわけです。

こうした角度付きのPUはまず最初にボディに平行、というか、弦に対してポールピースを真っ直ぐ垂直に向けるところから始めます。その後、1弦側の高さを決めて、1弦から6弦に向けて弦の出力を聞きながら、6弦側を調整します。

リアPUですから、本来は割と高めにして、PU自体のコンプ感が出るか出ないかのところくらいまで上げるところなんですが、T君のプレイスタイルを尊重して、今回はそこまで上げずに軽く下げた位置に決めます。で、この決めた1弦の出力に対して、各弦を1本1本つま弾きながら、6弦側を決めます。ジャパンヴィンテージという年代の製もあり、しっかり低音も出ている固体なので、ブーミーにならないように、それでいて6弦をしっかり捉えられるところで決めると、ボディと平行とは行かず、6弦側が若干下がります。

tuneup.jpg

これでスペクトラムアナライザーを見てみると、鳴っていなかった低中域がぐっと出てきていながら、ハイもしっかり残るようになり、僕が知っている本来のテレキャス、「硬さを持ちながらも武骨な太さ」が出てくるようになりました。

とりあえずリアしか使わないと言っていたので、この時点で弾いてもらうことに。

 

目から鱗のT君

「え?なんすかこれ?」がT君の第一声。いや、これが本来のテレキャスの音...と思うんですけど...?!。「これ、俺のギターっすか?」と、第二声を放つとしばらく弾くことに没頭するT君。黙ってたけど、実はこの間、5分は経過していました。

「ふう...」とLineセッティングで聞かせていたので、ヘッドホンをとるT君。「太いし、ハイは耳障りじゃないし...。テレキャスってこんなに太いんですか?」っていう勢いで、質問攻め。

「このギターまるで別物っすよ」といたく気に入ってくれた様子。まあ、よかった、よかった。

T君がぶっちゃけて、本当にちょっとしかいじらないように見えたらしく、たいした期待はしていなかったそう(おい!)。確かに+ドライバーでPUいじっただけだし。でも予想の斜め上どころか、遙か上に行ってしまった(一応本人の弁です)ので、えらく感動してくれたみたい。

で、ついでにフロントも調節しちゃいましょう。調整方法は、「PUの高さ調整の勧め 3シングルPU調整編や、「PUの高さ調整の勧め 2ハムバッカー調整編でおなじみの、PUセレクターで出力を変えずにトーンの切り換えができるタイプです。これは実際T君本人もどちらかというと、「ギター本来の音を出す」タイプではなく、「自分の音を追求するタイプ」ということで、この調整方法に了解を取って、仕上げました。

フロントはピックガードこそ外せど、基本はストラトと同じ2点止めなので、リアの出力バランスを聞きながら、セレクターで切り換えつつ、各弦のバランスを取りました。

フロントだけだと、結構弦から遠ざかったので、フロントの甘さは残りつつ、クリアな音の出るフロントに仕上がった訳ですが、意外と気に入ってくれたのがセンター(フロントとリアのミックス)です。

「いや、この音使えますって!」とT君。まあ、そりゃそうでしょう。フロントのふくよかさが混ざるとサウンドに腰が出てきます。つまり、全PUが全域で鳴るわけですから、張りも、腰も、ドカっと出てくるようになります。

tweet1.jpg

最初は見た目でこのテレキャスを選んで、ヤフオクで落としたとのことでしたが、そこから良い音にすべくPU交換をした訳ですが、前オーナーにはあまり鳴らないギターだよと言われていたらしく、自分で調整した分も含めても、「これなら前オーナーもびっくりすると思います。」っていってました。

 

 

配線チェック

もう一つT君の気にしていたのが配線。どうやらトーンカット配線をしているらしく、自分でやったのが気になっている模様。ということで、コントロールカバーを開けてみることに。

テレキャスもスタンダードとは言いながら、59年と66年で配線違うし、どの配線をしたのか気になるところではありました。で、T君が参考にしたHPをググってみることに。

ありました。で、よく見ると66年以降のスタンダードな配線です。これなら簡単と思い、コントロールカバーを開けると、???な配線...。トーンカットなのにトーンに配線してあるし、せっかく実体配線図なのに1カ所配線間違えてるし...(つまりトーンポッドにスルー配線の状態)。

でもまあ配線にはベルデン(たぶん#8503と思われる)とか使っているようだし...っておい!配線継ぎ足しはだめでしょ。ってんで、配線も変えることに。予備がなかったので、僕が気に入って使っているFCGRのCustom Wireです。ググると賛否両論ある配線材ですが、長い説明通りモダンな音を目指した配線材で、ボリュームを絞ったときの張りと艶は、なかなか秀逸です。

もちろん、音は変わりますので、T君に説明して了解を得ての交換です。リンディの音がどう変わるかは興味のあるところです。そして配線のローミッドとハイの出方を想定して、トーンは元に戻しました。

 

完成!

after_fcgr.jpg

アナライザーでチェックすると、確かにローミッドとハイがあがってますね~。ちょうど耳当たりの良いところで、張りと艶が出ている印象です。で、玄人の音作りはボリュームで作ると言われるように、僕が注目したかったのは少々ボリュームを落としたとき。小指が届く範囲で軽く絞ると、大体7くらいに落ちますが、これがまた...「にやっ」とするくらい、抜けがあります。普通は大体こもりますが、これがこのFGCRの恩恵です。リンディとも相まって艶が生きたまま歪みのコントロールが思いのままです。これははっきりと違いがわかったようでT君も満足げです。

数日後早速スタジオの音を録音で聞かせてもらいましたが、いつものiPhone録音でも明らかに音が違います。メンバーにも好評らしく「今日は全然音が違う」と言われたそうで、メンバーも音作りに感化されたそうです。

きちっとセッティングができれば、良い音を作るのも造作なく、影響力も大きいです。それだけ説得力ある音ができるわけです。今一度ギターのセッティングを見直してはいかがでしょう?